むかし、むかしあるところに万年春のような気候に恵まれた山があったそうな。
当然、冬の気候もあまり厳しくなく越冬が必要な生き物たちには天国のような環境でした。
その山の、とある一角には「アリ」と「キリギリス」が別々に暮らしていたそうな。
「アリ」は古くからこの山に住んでおり、この万年春の山にも、その昔には厳しい冬の時代があったことを知っている古参集団だそうです。
「キリギリス」は最近山へきた新参者であり、その集団の殆どは若く新しい物好きでした。
また、キリギリスはこの山に昔あったという厳しい冬の時代を知らず、この山には厳しい冬は来ないと思い込んでいたそうです。
キリギリスが山に現れた際にはアリは親切心から「偉大な先達からの言い伝えで、この山にもいつかまた本格的な冬が来るから冬の前には越冬の準備をするようにね」と教えたそうです。
しかしキリギリスはこう答えました。
「こんなに春ばかりなのに冬なんて来るわけがない、越冬の準備なんて無駄だね」と。
これに呆れたアリは以後、キリギリス達をほったらかして自分たちだけは毎年冬の前には長期間保存のきく食材や越冬に役立つ資源などを淡々と蓄える作業をしたそうです。中にはあまりおいしくない食材や無価値そうな材料もありましたが先達の教えを守り「季節の潮目が変われば役立つ」と言い聞かせてせっせと貯めたそうな。
そんな働くアリたちを見てキリギリスは嘲笑っていたそうです。
そしてこんなことを口々に言いました。
「あいつら(アリ)はあんな不味かったり何に使うかも分からないものを集めて何をしているんだ?クソださいね(笑)」
「俺たちは旨くていくらでも取れる食料だけを効率良く狩っているのにね(笑)」
「そもそもいくら待っても準備しても、この山に冬なんてこないからね、今は旨い最先端の食材だけに特化して集めるのがトレンドなのにね(笑)」
「なんならアイツらが無駄な資源を集めている時間で俺たちは3倍食材集めればいいんじゃね?この方法で一生遊んで暮らせるぜ(笑)」
「越冬の仕方を教えようか?アリパイセン。欲しい時に欲しい食材を狩るだけだよ。」
なんて調子でした。
そんなこんなでキリギリスが遊んでその日暮らしをしながらアリを嘲笑う日々が長く続いたそうです。
アリは腹に据えかねていましたし、中には堪えきれず教えを破ってキリギリスと迎合し、かつての仲間をバカにしだす者まで現れる始末でした。
山は完全に新参キリギリスが持ち込んだ「春時代が無限に続く」という楽観論に支配されつつありました。
しかし、当然そんな日々は長く続きませんでした。
ある冬、山にとてつもない大雪が降ったのです。
兆候はありました。
冬に入る前から例年に比べ気温が低めだったのです。
先達の言い伝えを覚えていたアリたちは寒さを感じる前から準備していたし、寒さに気が付いた後は越冬の準備を例年より強固な物へと切り替えていきました。
キリギリス達はどうでしょうか?
一部の個体は冬の気配に気が付きましたが結局、周りに流され忘れました。
そして暖かい季節にしか取れない食材の収穫が細りだしたことに内心気が付きながらも目を逸らし先細る食材を乱獲し続けました。この山でこの食材だけ集めていれば一生安泰だという思い込みが捨てきれなかったのです。
今さら考えを修正することを脳が拒絶したと言ってもよいでしょう。
更にタチが悪いことに、ただでさえバカで自分で考えない個体の多いキリギリス集団の中に「教祖」個体が現れてしまいました。
キリギリスの教祖個体は冬が迫る中、なんの根拠もないまま自信満々に「冬が来ようとその食材は育ちます!その食材だけ集めていればよいのです!!」と喧伝して回ったそうです。
そしてその食材を自身に献上させ私腹を肥やしていたそうです。教祖個体に心酔し食材を貢ぎ過ぎたキリギリスの中には冬の到来の前にやせ細ってしまう個体すらいたそうです。
この後の本格的な冬の到来で山の生き物たちはどうなったでしょうか?
- アリの大半は慎重に貯めた備蓄から厳冬を乗り切りました。
- キリギリスの好む食材は長期保存が効かず備蓄を切らしたキリギリスは死滅しました。
- キリギリスの楽観思想に流れたアリも備蓄を切らし死滅しました。
- 教祖個体のキリギリスは貢物でなんとか冬を凌ぎました。
しかし、その教祖個体は生き延びたものの急速に支持を失いひっそりと山から姿を消し、どこかでひっそり息絶えたそうです。
その後、このことを教訓としてアリたちは後世に語り継ぐのですが結局、山には再び万年春の時代が到来し、この当時のことを知らない新たなキリギリス達が流れついて同じ歴史を繰り返すのでした。
ちゃんちゃん
めでたしめでたし♪
最後に管理人から一言。
この元ネタとなった昔話は「働かざる者食うべからず」を教訓にするための昔話として読み伝えられるものですが、管理人としては「株式市場の教訓」として大きいお友達に読み伝えるべきお話だと思います♪
以上、じゃあの!