高卒です。
みなさまは今から2年ほど前に流行った「亡くなった人の運用成績が一番良い」という言説をご存知でしょうか?
この情報に関して調査すると出てくるのは証券会社の「フィデ〇ティ」がセミナーで配布した(と言われている)という安っぽい「い〇すとや」のイラストを使った安っぽいセミナー資料の画像のみです。
以下が、その画像です。
これに対し当時、投資ブロガーや投資YOUTUBER、その他SNS投資家(笑)が一斉に賞賛する記事やコメントを書いたのを覚えております。
その上、今でもことあるごとにこの言説を持ち出す人がいます。
みなさんはこの言説を聞いてどう思いますか?
ちなみに管理人はこの言説は半分以上嘘、良く言って例えだと思っています。
理由は、この統計が
- 層別がなされていない
- 期間の取り方が偏り気味
というペラペラのクソ統計だからです(他にも統計的にオカシイことはあります)
つまり言ってしまえば、この言説にはなんの説得力もないということです。
実際の資料は検索しても一切出てこないため「亡くなった人の運用結果が良かった」という結論だけが独り歩きしている状態なのは管理人からしたら甚だ疑問です。
層別がなされていない
層別(読み)そうべつ QC7つ道具のひとつ。データを年齢別などの同じ共通点を持つグループに分類すること。層別に分けることで、漠然としたデータの特徴がはっきりする。層別に分けたデータの分析に、パレート図やヒストグラムが利用される。 引用元:コトバンク
- 投資者の年齢
- 投資者の年収
- 投資者の職業
- 投資額
- 投資対象
などが一切説明されておらず、どうとでも解釈できる内容となっております。
たとえば投資額。
極端な例えで「亡くなった人」の投資額が100円だったとします。
この人がテンバガー株をたまたま保有していたとして10年の統計終了時には1000円になっていたとします。
当然ですが、この亡くなった人の10年運用利回りは統計終了時点で1000%となります。
これに対し、生きてリスクヘッジなども考えて1000万円の資産を運用していた人が統計終了時点で1200万円になってたとして10年運用利回りは無難に20%だったとします。
この二人はリターンで見れば「亡くなった人」の圧勝ですが単純な利益額だけで見れば「生きている人」の圧勝です。それも比較対象にすらならないレベルの大差です。
これで「生きている人」より「亡くなった人」とやらのリターンが高かった、パフォーマンスが良かったなどと言われてあなたは納得できますか?管理人にはできません。
こういった不公平を防ぐためにも統計を取るなら最低でも、
- 同じ投資額
- 同じ投資対象
に層別を行い、さらに30人程度のケースを用意して比較せねばなりません。
また、亡くなった人と生きている人の差を公平にするために生きている人は統計期間の買い増しや損切は禁止とする必要もあります。総投資額に差が出てしまいますからね。
でも、それじゃ生きて投資している意味ないですよね?
買い増しできないんじゃいくらリターンが良くてもいつまでも資産増えないですからね。
さらに当時インデックス投資が主流でなかったことを考えると投資対象を同じとすることはほぼ不可能であり、どうやっても比較するだけ無駄な統計だと言えるでしょう。
期間の取り方が偏り気味
そもそもこの言説の調査期間は2003年~2013年となっております。
この期間の取り方もズルいです。
なぜならこの期間は、
- 前半はネットが未発達で投資情報を手に入れにくい、つまり殆どの素人投資家は考えが古く、損切が必須だと思っていた時代。
- 中期はサブプライムショックという史上最強の暴落で多くの投資家を失望引退に追いやった時期、しかもドル・コスト平均法で耐えれば良いという考えも流行ってなかった。
- 統計後期は度重なる金融緩和による回復期、耐えた人が儲かる結果なのは必然。
というタイミングの切り取りであり、そりゃあ亡くなった人が儲かりやすい地合いでありますわな、と言った印象。
もっと言うと
- 死んでいる前提なので保有株式は2003年以前の激安株のみとなり
- 史上最強の暴落に対し一切損切しなかった設定となり
- 統計期間の締めの3年間は金融緩和による回復期となる
ですからね。
「亡くなった人」とやらに都合が良い期間であるとしか思えませんね。
というか、この言説が流行ったのが2020年であったこと考えれば、そんな前の統計ではなくもっと最近の2009年~2019年で比べれば良かったんです。もっとも、その期間は景気拡大期でありインデックス投資も流行が始まっていたことを考えると恐らく誰もが儲かっており、比較しても大した差が出なかったというのが現実だと管理人は思ってますが(笑)。
結局、管理人が何が言いたいかっていうと、最初に述べた通り、この言説は比較にならないクソ統計を元に言われているってことです。
余談:統計を出した人の意図を感じよう
こういった統計を見るときは統計した側の人の意図を読みましょう。
この統計の場合はフィデ〇ティの営業マン(今は男女差別用語らしい笑)か講師が持ってきたパンフレットだと考えるのが妥当でしょう。
ちなみに管理人が以前、個人的に調査した時はフィデ〇ティの投資信託は「優秀だが非常に手数料が高い」という印象でした。
以上にことより捻くれた管理人には高手数料証券会社の「ウチの高手数料投資信託を死んでも手数料払いながらホールドしてくれや」という意図が透けて見えます。
過去の記事でも同じことを言いましたが「統計」という技術は相手を言いくるめるための技術です。
そして〇カはこの「統計」という魔法の言葉を聞くだけで、
- 層別も確認せず
- 統計期間も確認せず
- 相手の意図も考えず
に、うわべだけのお気楽そうな雰囲気のイラストと安っぽいフォントのランキングだけでコロっと信じてしまうのですからちょろいモンですね。
こんな、しょうもない例え話を信じて得意げに語ってる人は今は良くても、いずれ何かしらの投資詐欺のカモになりますよ。
まあ、とはいえ長期投資において死んだつもりで放置するのが有効なのも事実です。
ただし、それは全世界株式インデックスのような長期投資に向いた商品に限った話です。
以上です。
また、次の記事で会いましょう。